「わたしのお茶事 和佳」で味わう懐石料理と本格抹茶(倉敷市)

かつて日本の貿易で栄えた港町・倉敷市玉島。京都から伝わった茶の湯は商家に広がり、多くの家に茶室が設けられました。歴史と茶文化が息づく玉島に、気軽に本格的なお茶事を楽しめる「わたしのお茶事 和佳」がオープン。一日一組限定のもてなしを体験!
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目次
- 「わたしのお茶事 和佳」とは
- ウェルカムドリンクは優しい甘さの甘酒
- 年代物の器コレクション
- くつろぎの客席
- 美しい庭園
- お茶事のしつらえ
- 繊細な懐石料理
- 作法にとらわれずに楽しむ、本格抹茶体験
- おわりに:玉島で触れる日本の心
- 「わたしのお茶事 和佳」へのアクセス
「わたしのお茶事 和佳」とは

2025年3月、岡山県倉敷市玉島にオープンした「わたしのお茶事 和佳」は、地元の新鮮な食材をふんだんに使用した本格的な懐石料理と、丁寧に点てられたお抹茶を、落ち着いた雰囲気の空間でゆっくりと楽しめる飲食店です。
一日一組(最大5名)限定の完全予約制という贅沢なスタイルで、訪れる人に心ゆくまで日本の茶文化を体験してもらいたいという店主の温かい想いが込められています。店主の佐藤さんは、日本の農林水産省を退職後、長年の業務で培った豊富な知識と卓越した料理の腕前、そして趣味として続けてきた茶道の深い経験を生かし、この素敵な空間を創り上げました。
ウェルカムドリンクは優しい甘さの甘酒

玄関をくぐると、まず応接間に案内され、温かい甘酒のもてなしを受けました。砂糖を一切使用していない甘酒は、お米本来の自然な甘さが際立ち、とても飲みやすい優しい味わいです。甘酒は栄養価が高く「飲む点滴」とも言われるほど身体に良いとされており、旅の疲れもじんわりと癒されるようでした。甘酒をいただいた後は、今日いただく懐石料理の献立を見ながら、次の空間へと移動します。
年代物の器コレクション

応接間には、店主の佐藤さんが長年にわたり大切に集めてきたという、歴史を感じさせる貴重な器や美しい花瓶、趣のある置物などが数多く飾られており、その一つひとつを眺めているだけでも心が豊かになります。この後の懐石料理でも、季節の移ろいに合わせて選ばれた珍しい器たちが、料理と共に登場するとのこと。料理と器の美しい調和も、この茶事の大きな魅力の一つです。
くつろぎの客席

懐石料理をいただく和室は、伝統的な畳の空間でありながら、快適なテーブル席が用意されています。通常、本格的な茶席では障子を閉めて静謐な空間を作り出すことが多いそうですが、ここでは、美しい庭の新緑を眺めながらゆったりと過ごしてほしいという店主の心遣いから、開放的な空間となっています。
美しい庭園

テーブル席の窓からは、丁寧に手入れされた美しい庭園の風景が広がります。鮮やかな新緑が目に優しく、玉島の中心地にいることを忘れさせるほどの静けさに包まれています。四季折々の自然の美しさを感じながら、特別な時間を過ごすことができます。
お茶事のしつらえ

お茶事の際、冬場は部屋の中央に設けられた炉(ろ)を使ってお湯を沸かしますが、夏場になると炉は畳で覆われ、代わりに床の間(とこのま:日本の伝統的な和室にある飾り棚のような空間)の前が中心となります。懐石料理をいただく際には、床の間に掛け軸が飾られますが、お抹茶をいただく時間になると、掛け軸は取り外され、代わりにその季節ならではの美しい生け花が飾られます。このように、お茶事の空間は季節によって変化し、訪れる人に繊細な美意識を感じさせてくれます。
繊細な懐石料理

懐石料理は、まずご飯とお味噌汁、そしてお刺身(飯、汁、向付)から始まりました。ご飯は、岡山県総社市産の特別栽培米「朝日米」。農薬や化学肥料を通常の半分以下に抑えて育てられた、こだわりの逸品です。お味噌汁の玉豆腐は、玉島の老舗豆腐店「ピーナツとうふ」のもの。白味噌と赤味噌を季節に合わせてブレンドした、奥深い味わいです。お刺身は、瀬戸内海の寄島で獲れた新鮮なヒラメの昆布締め。素材本来の旨みが凝縮されていました。使用されている野菜もすべて地元産というこだわりようです。
煮物椀

続く煮物椀は、瀬戸内海で獲れる高級魚アコウのくずたたき。上品な味わいはハモに似ていますが、より食べやすく、深い味わいでした。地元産の野菜も、絶妙な茹で加減で素材本来の食感と味わいが楽しめます。器は明治時代のものだそうで、外側には季節のユリの花、蓋の内側には蝶が描かれており、昔の人が五感を通して季節の美しさを楽しんでいた感性の豊かさに感動しました。
焼き物

焼き物は、香ばしいサワラの木の芽焼き。醤油ベースのタレがしっかりと染み込んでおり、ご飯が進む一品です。盛り付けられた器は、江戸時代の古伊万里。歴史を感じさせる美しい絵付けが、料理をさらに引き立てます。
炊き合わせ・和え物

炊き合わせは、旬の新玉ねぎと鶏肉のつくねに、彩り豊かなモロッコインゲンが添えられていました。まさにその時季ならではの味わいです。和え物は、地元玉島産の八朔と地元の野菜を白和えにしたもの。八朔の爽やかな酸味がアクセントとなり、さっぱりといただくことができました。
箸洗い

箸洗いは、具が入っていないシンプルな吸い物で、ほんのりとレモンの香りがしました。口の中をさっぱりとさせて、次の料理への期待を高めます。
八寸

八寸には、岡山名物のママカリの酢漬けをクリームチーズと和えた、斬新な一品が登場。初めての味わいでしたが、その意外な組み合わせが絶妙で、後を引く美味しさでした。岡山ならではの食材の新たな魅力を発見できます。小松菜のソースで和えられたものと共に、香ばしいおこげに乗せていただくと、さらに風味が増して絶品でした!お酒が飲めない私には、おしゃれな輪島塗の漆器で供された柚子サイダーが嬉しいサプライズ。普段使い慣れない盃でいただくのも、非日常感を味わえて楽しい体験でした。陶器の器は古伊万里(こいまり)で、鳥かごの絵が描かれていますが、鳥は描かれていません。「想像してみてください」という遊び心のあるデザインに、古伊万里の奥深さを感じました。
※古伊万里(こいまり)・・江戸時代(17世紀初頭から19世紀半ば)に現在の佐賀県有田町周辺で焼かれた磁器のことで、海外にも輸出され人気を博しました
湯桶(ゆとう)・香の物

湯桶は、そば猪口に入った温かいお粥のようなもの。香の物の沢庵には、細かい隠し包丁が施されており、「(邪気を)拭っていく」という意味があるそうです。香の物の器は、珍しい扇子の形をした備前焼でした。
季節のお菓子

懐石料理の締めくくりは、玉島の老舗和菓子店「松濤園」の、美しいバラをモチーフにした季節の生菓子。ここで一度席を立ち、隣の応接間で、お抹茶を点てる準備が整うのを待ちます。
作法にとらわれずに楽しむ、本格抹茶体験

お抹茶の準備が整い、再び和室へ。通常は厨房で点てられたお抹茶が出されますが、今回は特別に店主の佐藤さんが目の前でお茶を点ててくださいました。静かな空間に、お湯を注ぐ音と茶筅の音が心地よく響きます。丁寧に点てられたお抹茶がテーブルに運ばれ、「作法は気にせず、どうぞお召し上がりください」という優しい言葉に、緊張もほぐれます。

一口いただくと、その豊かな香りと上品な苦みが口いっぱいに広がり、まさに至福のひととき。「ズズッ」と音を立てて、最後の一滴まで飲み干してよいそうです。

お抹茶をいただく際には、懐石料理の時に飾られていた掛け軸から、季節の生け花に変わっていました。この日のお花は紫蘭(シラン)で、素朴な備前焼の器に楚々と生けられ、その美しい佇まいに心が安らぎます。
おわりに:玉島で触れる日本の心

歴史ある茶文化が深く根付いた玉島という土地。「お茶があるからこそ、それに合うお菓子があり、道具を扱う店もある」。そんな本物の文化が今も息づいているエリアです。「わたしのお茶事 和佳」は、この素晴らしい茶文化を、時代の変化に合わせて楽しみながら未来へと繋いでいきたいという佐藤さんの新たな試みとして始まりました。
ぜひ一度、この特別な空間を訪れて、日本の美意識と温かいおもてなしに触れてみてください。早くも多くの予約が入っており、数ヶ月先まで予約が埋まっている日もあるそうなので、気になる方はお早めにご連絡ください。
※お店へのアクセスについて: カーナビゲーションシステムが誤った場所を示すことがあるようです。玉島通町商店街を目指していただき、商店街の中にある写真の矢印の方向に曲がったところ、赤いポストが目印です。
「わたしのお茶事 和佳」へのアクセス
【わたしのお茶事 和佳】
所在地:岡山県倉敷市玉島3-3-10
電話番号:090-2524-0297
営業日:金曜日~日曜日(完全予約制)
お茶事開始時間:午前11時(所要時間 約2時間)
料金:10,000円(税込)
駐車場:あり
※日本語サイトの為、外国語はブラウザで自動翻訳をおすすめします。
岡山県は、西日本の中央に位置しており、1年を通して雨が少なくて温暖な気候から「晴れの国」と呼ばれています。京都、大阪、広島の有名観光地めぐりの中間点でアクセス便利!瀬戸大橋を経由して四国に渡る際の玄関口でもあります。 また、「フルーツ王国岡山」とも呼ばれ、瀬戸内の温暖な気候の中、太陽を浴びたフルーツは、甘さ、香り、味ともに最高品質。 白桃をはじめ、マスカットやピオーネなど、旬のフルーツが味わえます! 「岡山城」や日本三名園の「岡山後楽園」、倉敷美観地区といった、歴史、文化、アートなど世界に誇る観光スポットもあります!